ニュースで「鉱工業生産指数」という言葉が出ているけれど、これは何の指標でしょうか。
景気の動向を知る指標として使われています。この記事を読んだ後に、またニュースを見ることで少し内容が理解できるようになると思います。
過去の記事で、内閣府が発表している景気動向指数を紹介しましたが、鉱工業指数も同様に日本の景気動向を知る上で重要な指標となります。コロナ禍における、実際の数値も載せていますので、現在どういう状況にあるのかチェックしてみてください。
鉱工業指数とは
日本全体の鉱工業の動向を示す統計で、毎月、経済産業省が発表しています。鉱工業とは、「鉱業」と「工業」の2つを指しています。「鉱業」とは、燃料鉱物(石油、石炭), 金属鉱物(金、銀、銅、鉄、鉛)、非金属鉱物(硫黄、リン)などの鉱物資源を採掘する産業となります。「工業」は、一般に製造業と言われており、新製品の製造加工、販売する産業を指します。
これら「鉱業」「工業」を合わせた鉱工業の動向を把握することで、日本の景気動向の参考とすることができるということです。
鉱工業指数に着目する理由
鉱工業指数に着目する理由は大きく3つあります。
日本のGDPに占める割合が多い
日本の鉱工業は、GDPの2割を占めており、鉱工業に関連する産業まで含めると4割まで占めるようになります。GDPの4割への影響と考えると、この指標を参考にするのは納得がいきます。
景気に敏感である
特に製造業は、在庫に対するリスクや、機会損失を減らしたい(買いたい人はいるのに在庫がなくて売れない)など、需要に対して敏感に反応します。景気が悪くなれば、在庫を抱え、景気がよくなりそうであれば、生産を活発化します。
リアルタイム性が高い
冒頭で書きましたが、経済産業省が毎月発表しています。GDPが四半期ごとに対して、毎月発表されるので早めに状態を把握することができます。
鉱工業指数の種類
鉱工業指数には以下の6種類あります。各種類の説明は、経済産業省のHPより抜粋します。
生産指数:
鉱工業生産活動の全体的な水準の推移を示します出荷指数:
生産活動によって産出された製品の出荷動向を総合的に表すことにより、鉱工業製品に対する需要動向を観察します在庫指数:
生産活動によって産出された製品が出荷されずに生産者の段階に残っている在庫の動きを示します在庫率指数:
在庫とその出荷の比率の推移をみることにより、生産活動により産出された製品の需給状況を示します生産能力指数:
製造工業の生産能力を、操業日数や設備、労働力に一定の基準を設け、これらの条件が標準的な状態で生産可能な最大生産量を能力として定義し、これを指数化したものです稼働率指数:
出典:経済産業省ウェブサイト 鉱工業指数の概要(https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/gaiyo.html#cont1)
製造工業の設備の稼働状況を表すために、生産量と生産能力の比から求めた指数です
各指標を一言で表すと、下記のようになります。
指数の種類 | わかること |
---|---|
生産指数 | 生産の活動状況がわかる |
出荷指数 | 需要の動向がわかる |
在庫指数 | 在庫の状況 → 需要の動向が分かれば次の生産動向もわかる |
在庫率指数 | 在庫と出庫の需給バランスがわかる |
生産能力指数 | 設備投資状況がわかる |
稼働率指数 | 設備稼働状況がわかる |
たくさんありますが、中でも「生産指数」は 鉱工業指数の中心となっており、ニュースでもよく「鉱工業生産指数」という言葉で取り上げられているため着目しておいてください。下記の記事で、内閣府が発表している景気動向指数について紹介しましたが、「一致指標」の採用系列に挙がっています。つまり、「景気とほぼ一致して動く指標」となります。先行、一致、遅行について知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
鉱工業指数の分類方法
鉱工業指数は、2つの分類方法があります。経済産業省で公表されている鉱工業指数をみると、さらに内訳まで見ることができます。この時、以下の2つの分類で確認ができます。分類の仕方が2つあることを知っていれば、データを見た時に混乱しないとい思います。
業種別分類:業種による分類
大きなくくりですが、以下にピックアップします。最後の鉱業、以外は、製造業配下の分類となります。
- 鉄鋼・非鉄金属工業
- 金属製品工業
- 生産用機械工業
- 汎用・業務用機械工業
- 電子部品・デバイス工業
- 電気・情報通信機械工業
- 輸送機械工業
- 窯業・土石製品工業
- 化学工業|化学工業(除.医薬品)
- 石油・石炭製品工業
- プラスチック製品工業
- パルプ・紙・紙加工品工業
- 食料品・たばこ工業
- その他工業
- 鉱業
分類を知ったところで、実際のデータを見てましょう。下記は、経済産業省が発表しているデータから抜粋したものです。
5月はほぼ全てにおいてマイナスになっているのがわかります。全体の指標だけではなく、どの分野に大きく影響が出ているのかがわかりますね。
財別分類:財による分類
財による分類は以下です。
分類 | 説明 | 例 |
---|---|---|
資本財 | 設備投資に向けられる製品 | 印刷機器、掘削機器、クレーン、金属工作機器 |
建設財 | 建設投資に向けられる製品 | 鉄骨、セメント |
耐久消費財 | 家計で購入され、耐用年数が長い製品 | TV、携帯 |
非耐久消費財 | 家計で購入され、耐用年数が短い製品 | 食料品、衣料品 |
生産財 | 原材料として投入される製品 | 乗用車用タイヤ、石炭 |
鉱工業指数のしくみと見方-入門スライド- より作成
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/pdf/iip_nyuumon.pdf
財別についても同様に見てみましょう。
耐久消費財はかなり影響を受けていますね。一方で、非耐久消費財はほとんど影響を受けていないのがわかります。
まとめ
景気の動向を知るための指標として、鉱工業指数を紹介しました。
- 日本の鉱工業関連はGDPの約4割を占める
- 鉱工業指数は鉱工業の生産などの活動状況を知ることができる
- 鉱工業指数は6種類ある
- 鉱工業指数は2つの分類方法がある
ニュースで「鉱工業生産指数」などチェックしてみましょう。
参考資料
- 経済産業省 経済産業省調査統計グループ経済解析室
鉱工業指数のしくみと見方-入門スライド-
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/pdf/iip_nyuumon.pdf - 経済産業省 鉱工業指数の概要
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/gaiyo.html#cont1 - 経済産業省 鉱工業指数参考図表集(2020年7月速報)
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202007s.html
[…] 景気の指標となる「鉱工業指数」とは何かニュースで「鉱工業生産指数」という言葉が出ているけれど、これは何の指標でしょうか。いくおこの記事を読んだ後に、またニュースを見る […]