原因分析で利用されている、パレートの法則(パレート図)について紹介します。
この記事を読むと、「パレートの法則とは何か」「パレート図の作り方」を理解することができます。
パレートの法則を理解し、効果的な箇所から問題解決にあたることができるようになります。
「パレートの法則」とは
パレートの法則とは、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した所得分布についての経験則です。
パレートは、「全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出している」としました。
「社会における富の80%は,20%の高額所得者が所有している」というと聞いたことがある人もいるかもしれません。
ここからパレートの法則は、「80:20の法則」「2:8の法則(ニハチ、ニッパチの法則)」「ばらつきの法則」などとも呼ばれています。
一方、経済以外の自然現象や社会現象に対しても、経験則として同様に当てはまるとして、以下のようなことが言われています。
- 売上の80%は、20%の従業員が生み出している
- ソフトウエアの開発工数の80%は、20%のコードにかけられている
- クレームの80%が、全商品の20%に起因している
「パレートの法則」の注意点
改めて記載しますが、あくまでも経験則です。
そのため、全てに当てはまるものではない可能性がありますし、厳密に2割・8割と捉えるのではなく、「少数の要素が,全体の大部分を占めている」と均等ではなく偏りがあるというくらいに考えるとよいと思います。
パレート図とは
パレート図とは、項目別に分けたデータを値の大きな順に並べた棒グラフと、各項目の累積比率(各項目の割合を累積したもの)を折れ線グラフで表した図です。
①カテゴリーに分類し、カテゴリーのデータの値が大きい順に並べた棒グラフ
②累積比率を表す折れ線グラフ
品質管理(Quality Control)手法として、QC7つ道具というものがあります。
パレート図は、QC7つ道具の1つに入っており、問題の原因分析に役立て、優先的に対処すべきところを決めるために利用されています。
パレート図を見れば、累積で80%に入っている項目(上図では、仕様不具合、設計ミス)を、重点的に対処していこう、という判断ができます。
QC7つ道具
- パレート図
- 特性要因図
- グラフ
- ヒストグラム
- 散布図
- 管理図
- チェックシート
パレート図をExcelで作成する方法
動画の方が把握しやすい方は、以下のアニメーションをどうぞ。
分析したい項目の表を作成する
データの値が大きい順に並べる
ここでは、不具合分析を例に考えます。
不具合原因というカテゴリーごとに、バグ件数を整理します。
ここでのポイントは、値を大きい順に並べておくことです。
※棒グラフ側の準備となります。
累積比率を求める
累積比率を求めるために、以下の2ステップを行います。
1. 全体に対して各カテゴリーの割合を求める
バグ件数全体から、各カテゴリの割合を求めます。
数式は図を参照してください。
注意点としては、下の行にコピーするために、分母は行列共に$を付けておいてください。
詳しく説明しませんが、F4を押すことで$がつく場所が変わります。アルファベット、数値の前に$がついていることを確認してください。
これによって、常に参照する分母は変化しません。
比率の列を削除し、累積比率の列で一気に求めても構いません。
ただし、複雑なものを管理する場合は、出来るだけ分割して管理しておくのが吉です。
どこかで数式が合わなくなったりした場合に問題の特定がしやすくなるためです。
ここではあえて別の行で記載していますが、好みの書き方で対応いただいて結構です。
2.累積比率を求める
直前のカテゴリの割合+現在のカテゴリの割合を求めていきます。
1行目も同じ数式でいきたいために、dummy行を追加しています。
この行は後で、非表示にしますのでグラフにも表示されません。
グラフ化し、パレート図を完成させる
dummyの行を選択肢、右クリックで「非表示」を選択する。
グラフ化したい範囲を選択し、挿入タブのグラフの挿入をクリック。
第二軸の方にもチェックを入れておくことで、右側に累積比率側のメモリも表示されます。
グラフが挿入されるので、「グラフの種類の変更」から
「組み合わせ」を選択肢、累積比率の方を折れ線グラフにします。
棒グラフの間をつめる設定を行います。
棒グラフを右クリックし、要素の間隔を0%にします。
後は、好きなように装飾して完成です。
「パレートの法則」の活用事例
QC7つ道具で活用されていることは前述の通りですが、それ以外にも「ソフトウェア開発」「事業戦略」など幅広い分野で活用されています。
それぞれの事例を簡単に紹介します。
【パレートの法則】ソフトウェアテストでの活用事例
例えば、「ソフトウェア開発テストでどの程度単体テストを実施すればよいか」という指標として活用されています。
網羅率もすべてのコードに対して計測する必要はありません。
2:8(パレートの法則)の2の部分だけ計測すればよいのです。
ソフトウェア品質を高める開発者テスト アジャイル時代の実践的・効率的なテストのやり方 /翔泳社/高橋寿一
【パレートの法則】事業戦略での活用事例
1年間英語完全ンマスタープログラム「トライズ」の事業戦略でも、パレート図を活用していたそうです。
「英会話スクールを選んだ理由」に関するアンケート調査結果から、パレート図を作成し、80%に含まれる内容を把握。
以下のような項目があり、「ブランド力」については含まれていなかったそうです。
- 立地がよい
- 講師がよい
- 窓口対応がよい
- 予約のとりやすさ
- 教材が充実している
- 希望のレッスンプランがある
そこで、上記を優先的に注力したそうです。
例えば、レッスンプランは、
- 目標に合わせ個別に作成
- 教材も世界中から最適なものを探して提供
- 一人一人にパーソナルトレーナーがつき、最適なネイティブ講師を担任する
など、注力するポイントを絞っているため集中と選択が可能になります。
なお、この事例は、下記の書籍に記載されています。
まとめ
以上、パレートの法則について紹介しました。